2012年3月4日日曜日

マレー語に関する章(11)聖牛名をもった官名



 《聖牛名をもった官名
 「聖牛名をもった官名


 伊勢の神宮建築をさらに深く観察してみると、

 <千木>が<角>を意味することが、

 誤りでないことを証明するものが幾らでも見つかる。

 図を御覧戴けば充分なように、

 それは<牛の頭部>を表現する数々の努力の跡を止どめているのである。

 まさか<神宮>と<牛の頭>とお思いになる方も多いと思うが、

 天照大神の弟であるスサノオの命は間違いなく

 「牛頭天王」とされているし、

 邪馬臺国の官名にもそれが見られる。

 その証拠に<『記・紀』の世界>と<魏書倭人章の世界>を結ぶ重要なシムボルが、

 <牛>であるという事実を、これから御覧に入れることにしょう。

 漢字音が時代によって大きく変化したことはもうすでにお話ししたが、

 コラムの説明のとおり、

 カールグレン氏によってそれが

 <上古音>、<中古音>、<近世音>に三大別された。

 邪馬臺国四つの官名のうち<奴佳鞮>は、

 この研究結果に従がうと、

 中古音で「ヌォガィディェイ」と発音せねばならぬことになるが、

 これはどうみても日本語や朝鮮語ではない。

 どこの言葉に一番似ているかというとマレー語なのである。

 例をあげると、マレーの<州>は<ヌグリ>とよばれる。

 また少し発音が変わるが

 <N>が語頭に来る<Nガ>(<ン>と<ガ>を別々に発音してはいけない。

 一種の鼻音で、しいていえば<ヌァ>に近い音にきこえる)云々という語が、かなりある。

 <ンガリル>は「流れる」という意味をもっているから

 <ヌガリル>の方が<ナガレル>に近いことはすぐおわかりになると思う。

 <ンギアウ>は<ネコの啼き声>だから、

 <ニヤウ>であって<ン何々>でないこともおわかりと思う。

 では<ヌォガィディェイ>に一番近い言葉は何かというと、

 <ヌガンディ>という名詞である。

 <ヌガンディ>とは何かというと、

 これは<牛の像の名>なのである。

 ジャワの有名な「チャンディ・プレムバナン寺院」にある

 <ジワ教>の<聖なる牛像>は今でも「ヌガンディ」とよばれて信者の崇敬を集めている。

 次に<載斯烏越>を同じく<中古音>で読むと

 「ツァイシェウォ<ジワ>ブト」ということになる。

 この<ツァイシェウォ>を、旁国名にあてはめてみると

 「対蘇王」と当て字されたものに合うが

 ジワブトは右の<ジワ>と人(びと)「ジワ人(と)」と読めるのである。

 また<掖邪狗>を中古音でよむと「ヤ<ジワ>ォカウ」となり、

 八<ジワ>公ともなる。

 さらに、<都市牛利>をみると中古音で「ツオジ<ヌギャンリ>ー」となり

 <ヌギャンリー>の部分は<ヌガソディ>とそっくりになる。

 しかもこの名は最初からヌギャンリーに対して

 「牛利」と文字の意味まで一致する用字になっている。

 さらに思い出して戴きたいのは<卑弥呼>の語源であった

 <天の日矛>の別名、<ウシキアリシチ>や、<ツヌガアラシト>であり、

 そのまた語源である沖縄の国名の音が、

 <チヌ>、すなわち「角」であったことである。

 一体、こんなに偶然が重なることがあるであろうか?

 図:牛頭を象った神宮建築の棟飾部(加治木原図)>

 角・上顎・鼻面・耳・歯・下顎

 「カールグレンと漢音」

 スェーデンの支那(中国)学者ベルンハルド・カールグレンは

 1915年以来、中国文化についての優れた業績を残したが、

 中でも中国語の声韻が、時代によって大きく変化したことを、はっきりと突きとめ、

 それを一般に理解し易い形で解説してくれたことは、

 中国語ばかりでなく、漢字文化の一面を担う日本の古代史学にとっても、

 貴重な貢献であったことを忘れてはならない。

 彼はこの学問の創始者でもなく、またその結果にも限界があるが、

 それは人力として当然のことであって、

 彼がこの学問を新らしいシステムによって

 人類に役立つものに高めた事実は永く感謝される価値をもっている。

 〔例〕    上古音 中古音 現代音

     邪    dzia    zia     sie

     邪    dzio    ziwo    su

     馬  ma   ma      ma

     臺  deg     dai     tai

         壹    iet     iet     yi   

     奴    no      nuo     nu 

         佳    geg     gai     gia     gie  

         佳    keg     kai     kia     kie

         鞮    dieg    zie     chi  

     鞮    dieg    diei    ti  

        烏   o       uo      wu

     越    giwat   jiwbt   yue  

   言語復原史学会
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 《参考》
 古代時代の考古学の最新発見・発表・研究成果
 最新の考古学的発掘の方法
 存在価値が問われる我が国の発掘考古学の現状

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