2015年10月9日金曜日

青垣と神社≪曲玉(勾玉)≫


 ≪青垣と神社≫
 
 ※出典:
 創世紀―牛角と祝祭・その民族系譜―
 著述者:歴史学講座「創世」 小嶋 秋彦
 執筆時期:1999~2000年

  「青垣」を三輪山そのものとする考えを述べた。

 それは『古事記』の原書に「倭青垣東山」とあることに依る。

 「垣」は天門である三輪山そのものであり、

 「青」は緑の樹木に包まれていることを想起させる。

  サンスクリット語の「垣、囲壁」を表わす

 kaksyā は kakṣa と同類で双方とも「帯」の意味を含む。

 『古事記』雄略天皇条の歌に

 「みもろに築く玉垣」とある「玉」はサンスクリット語の

 dāna の音写で「帯、紐」を意味し、

 「玉垣」は神殿などの周囲に設けられた垣で、

 瑞籬などをいうものである。

 帯は環状にして使用されるもので、

 mālā は「環」を表わし

 御諸の原語 mih(megha)-mālā の構成語で、

 環が輪であることから三輪となっている。

  この環こそ三輪山の垣なのである。

 サンスクリット語 kakṣa (垣) の同義語に kāñci (垣) があるが、

 これはラテン語の cingo 、cinxi、cingulum と

 祖語を同じくする。

 その祖語は北メソポタミアの山脈シンジャール sinjer に

 遺留されている。

 Sinjer はドイツ語に

 Zingel (囲壁、市の城壁、段丘)、

 Sigel (市の外壁)となっている。

 またサンスクリット語に śṛṅga があり、その本意は「角」である。

 パーリ語では śinga と表記される。

 シンジャール山脈のある地方はハブール地方で

 牛角信仰の主要な地域であったとの考察を

 第2章 「メソポタミアと牡牛」で展開した。

 同語はまた「小塔、高さ、頂点、山頂、峰」の意味を持つが、

 śṛṅga-gāta は「三角形、三角形の場所」を表わす。

 その訓音は、śṛṅga-vera が生姜:しょうがを意味するので、

 英語の ginger 、ドイツ語の Ingwer にあるように

 「シンジャーール」 であることに間違いない。

 「角」がカルト(ケルト)人の祖語であることは

 第3章 「カルト人の進出」などで考察した。

 ラテン語の cerat は「角」であるが、

 ドイツ語 Gurt は「帯、紐」である。

 これらの用語が持っている概念がシンジャールである。

 「青垣」はこの sinjer を祖語とするサンスクリット語の

 śṛṅga(シンガ):角を音写した用語である。

 メソポタミアのアルパチア遺跡から出土した碗に描かれた

 高床式建物の屋根は牛角の形容をみせていた。
  
 その高床式建物を守るために垣、壁が

 備え付けられただろうことも考察した。

 それらを総合した神殿 sig (壁)-gur (穀倉)が

 シンジャールなのである。

 「青垣」 の音訓は sei-en (日本語音訓)だが、

 古語では sin-gan であったとみられる。

 垣は「クァン、グワン」と訓まれた。

 漢音に於いては qing-yen である。

 Singan は śṛṅga またはその同義の śṛṅgaka である。

 三輪山はその śṛṅga の概念に合致する円錐形の山容である。

  三輪山は確かに緑の樹木に包まれ、

 その状態から「青」が連想され用いられたと想像できるが、

 実は「青」には別の理由も考えられる。

 桜井茶臼山古墳の遺物の中に碧玉製の玉杖があったのを始め、

 三輪山の山ノ神祭祀遺跡からは五個以上の碧玉製曲玉、

 南麓の脇本遺跡の菅玉など、

 この周辺からは緑色、青色の宝玉が多く出土している。

 それには理由があり、大物主神であるインドラ神は

 indra-nīla といって青玉(サファイア)、

 緑柱石(エメラルド)と結びつけられ、

 それらの宝玉に飾られているからである。

 Nīla は「青、蒼、青緑、紺青」の色を表わす。

 さらに「黒い、暗青色」を含む。

 Mahā-nīla はサファイアをいう。

 この概念が「青」字を使わせたのである。

  「神社」は青垣がさらに転訛された表現である。

 三輪山は神殿を必要としないので青垣が妥当であったが、

 「本殿/神殿」を備えた宮にとってはその表現は相応しくなかった。

 神社の定型はアルパチア遺跡の碗に描かれた高床式建物同様、

 神体を斎(ゆま)はる聖所への階段があり、

 屋根には角状の千木が施されている。

 また神殿の前には拝殿が建てられ、その左右から壁を継ぎ、

 神殿を包む囲壁とされる。

 神殿地には神職以外入れないというのが原則で、

 ここが天空界であることを示唆している。

 その象徴として鳥居を設け神社が天空界であることを参拝者に

 教えている。

 神社(ジンシャ)とは日本固有の用語ではなく、

 ハフリ:祝と同様メソポタミアから始まった宗教用語なのである。

 第5章 旧約聖書「創世記」でみたように祝祭の宗族ユダヤ教の

 宗教施設シナゴーグ synagogue (英語) も、

 「集会所」がその役柄で、宗旨として神体を持たない理由によるが、

 その祖語も sinjer であろう。

 キリスト教の教会

  kirche(ドイツ語)、

  church(英語)なども

 祖語は「角」である kert である。

 「神社」が

 サンスクリット語の śṛṅga 、

 パーリ語の sīng (角)= sinjer に

 由来するとして少しもおかしくない。

《参考》

 ARPACHIYAH 1976
 高床式神殿、牛頭、空白の布幕、幕と婦人、マルタ十字紋等
 (アルパチア遺跡出土の碗形土器に描かれている) 
  
 牛頭を象った神社建築の棟飾部

 本生図と踊子像のある石柱

 Tell Arpachiyah (Iraq)
 Tell Arpachiyah (Iraq)    
 ハラフ期の土器について
 ハブール川
 ハブール川(ハブル川、カブル川、Khabur、Habor
、Habur、Chabur、アラム語:ܚܒܘܪ, クルド語:Çemê Xabûr, アラビア語:نهر الخابور Bahr al-Chabur
 ARPACHIYAH 1976
 高床式神殿
 牛頭を象った神社建築の棟飾部
 神社のルーツ
 鳥居のルーツ

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